転勤で配偶者が仕事を辞めて、一緒に転勤先についていくことってよくあることですね。
でもそれはだいたいにおいて、旦那さんの転勤に奥さんがついていくことが多いのではないでしょうか?
実は、わたしは奥さんの海外出向のために、自分の仕事を辞めて、キャリアを捨てました。
男にとって、一部上場会社を辞めるということはかなりの勇気と覚悟が必要でした。
男性にとってのキャリアとは
最近では女性だって仕事に打ち込む人も増えてきました。
キャリアを追い求めて、会社役員になっていく女性も多いです。
なので、奥さんの仕事を優先させて、旦那さんが仕事を辞めることも増えてきました。
キャリアは男性にとっては、社会的なステータスです。
社会としては、まだまだ男性が大黒柱で働かなくてはならないという固定観念は根強いです。
そのような社会にあって、男性が仕事を辞めて女性のキャリアを優先させることは、想像以上に大変です。
なので、実は仕事を頑張っていた女性が仕事を辞めて、専業主婦にならざるを得ない気持ちは痛いほど分かります。
仕事を辞めるとどうなるか
仕事を辞めることは、自由になることでもあるし、また反対に誰かの扶養になることです。
扶養になることに双方が納得して、そして会社を辞めるわけですが、これがまたわだかまりは残るんです。
辞めて、そして引っ越して、新しい生活のセットアップは時間もかかるし、精神的に張りつめます。
なので精神的に何かをじっくり考える余裕や時間はありません。
でも、そのうち時間に余裕が出てくると考えるんですよね。
こんな風に。
喪失感がかなりある
仕事を辞めてしばらくすると、社会との繋がりがなくなって、不安が出てきます。
その次に、自分のキャリアを途切らさせてしまったことに、喪失感を感じます。
何もすることがないからです。
この喪失感がまた厄介で、なぜそうなったのかは明白ですから、旦那さんや奥さんのせいにしたくなります。
双方納得して選択したことなのに、それでもやっぱり喪失感はもたげてきます。
この喪失感が大きければ大きいほど、家庭に影を落とします。
男性は特に仕事をするものだという意識が強いので、余計にそう思うことになります。
主夫は時間がたくさんあって困る
主夫になると、家事をすることになります。
食事の支度、子どもの送り迎え、掃除洗濯、買い物、家事を一通り行うと、意外に重労働だな、と思うでしょう。
実際にイベントの時間は決まっているので、これが忙しく感じる原因でもあります。
でも、男性なのでわりと家事については効率良く行うことが得意です。
そうなると、家事が早く終わってしまうんですよね。
その結果、暇な時間が産まれるんです。
人間、暇だとろくなことを考えません。
考えることといったら、仕事のことです。
今ごろ自分はどうだっただろうとか、同僚は順調に仕事をしているのかとか。
一番考えてしまうのは、このまま社会復帰できないのだろうか、でしょう。
アイデンティティクライシス
自分が社会に繋がっていないと、自分のアイデンティティが揺らぎます。
子どもの学校では、保護者として顔を出すのが父親の場合、「あの人、仕事していないの?」と噂されることを気にするようになります。
実際はそんな噂はないのかもしれませんが、世間の目が気になってくると、そういう思い込みが出てきます。
自分は何しているんだろう?
主夫だけど、それで価値を生み出しているんだろうか?
自分の人生意味があるのだろうか?
だんだん自分のアイデンティティが崩壊してきます。
趣味を思いっきり楽しめる人ならいいでしょう。
家事以外にやることがあって、打ち込めるのであれば、考える暇はありません。
わたしはだんだん鬱っぽくなりました。
社会と繋がっていない自分は、誰に必要とされているのか、どんな価値を生めるのか。
自分って何だろう、仕事辞めて奥さんの出世のためにキャリアを捨てたけど、そうしなければ良かった。
考えることがどんどんネガティブになってきます。
アイデンティティが壊れるんですよね、まさにクライシスです。
社会との関わりが見えない
地方に行った場合、仕事は見つかるかもしれませんが、前職よりも給与は安くなります。
給与が安くなるのであれば、男性の場合は特に、働くことに意味を見いだせません。
給与が安いのに、働く価値があるのか、と考えてしまうためです。
また、海外に出た場合は、ビザの関係で働けるかどうか分かりません。
労働ビザがなければ、働けない国の法が多いのではないでしょうか。
いずれにしても、社会と関わらないので、自分が孤立しているような感覚になります。
海外に出て、運良く働けたとしても、やはり理想と現実という壁があります。
現地採用と駐在員の差
海外では、同じ仕事をしているのに、現地採用と駐在員では待遇に差があります。
もちろん、これは致し方ないことなのかもしれませんが、それでもやはり同じ仕事なのに待遇に差があれば納得するのは難しいでしょう。
現地採用で働いていたとして、日本に帰れば、また転職活動をしなくてはなりません。
そうすると、キャリアがまた途切れてしまいます。
一旦レールから外れると、日本の企業であれば出世も年収も捨てなくてはなりません。
この辺のデメリットと折り合いをつけないと、苦しい思いは続いていきます。
ただ、海外に出ると、それはそれで良い面もあります。
海外での貴重な経験となるか
海外で働くというのは、実に貴重な経験です。
仮に働けなくても、3年5年と海外で暮らす経験は、普通の人はできないことです。
なので、海外で生活することは貴重な経験として楽しむべきです。
帰国後にその経験が活きるかどうかは、別問題ですが、それでも自分の人生を豊かにしてくれます。
また、日本の地方都市への転勤についても、やはり貴重な経験となるのではないでしょうか。
転勤で男性がキャリアを捨てるということ
奥さんのキャリアを優先させるために、自分のキャリアや仕事を捨てる男性は、これから増えてくるのではないでしょうか?
女性の社会進出のトレンドもありますが、各企業におけるダイバーシティ化、つまり女性管理職を増やすことも、これからどんどん増えてきます。
女性の海外駐在も増えてきますし、キャリアを積むために、日本国内の転勤も当然あるでしょう。
経済学では、比較優位の法則、という言葉があります。
双方のそれぞれ得意とする分野の産業を伸ばしていった方が、全体としての利得が大きくなるということです。
つまり、ひとつの家計として奥さんの稼ぎが大きければ、旦那さんの稼ぎを充てにせずに、転勤で旦那さんが仕事を辞めた方が家計として大きくなるということです。
当たり前といえば、当たり前ですね。
ただ、人間ですから、男性としては仕事を辞める、キャリアを捨てることで、精神的にかなりつらいことは確かです。